2022年も年の瀬を迎えようとしている。能登の祭りシーズンを終えて、最近の僕は金沢や富山などでスナップを撮ることが多かったのだが、12月に入り、久しぶりに祭り遠征に行ってきた。今回は、長野県飯田市で行われた「遠山の霜月祭り」を紹介したいと思う。

飯田市街地から車で約1時間。「遠山郷」は南信濃の山あいに位置する。4年前に初めて行ったときは、辺りが暗くなった時間帯に移動していたので、いったいどれだけ山中へ入っていくのだろうと不安でいっぱいになった記憶がある。今年は朝から撮影に向かったので辺りが明るく、こんな道を通っていたのかと初めて知ることになった。

12月の上旬から中旬まで続く霜月祭りは、例年だと南信濃地区6か所、上村地区4か所の計10か所で行われ(今年度は8か所)、それぞれ日程が異なる。こういうご時世なので、今年は参加の条件も制限されての開催。僕は今回、参加に制限のない「下栗・拾五社大明神」の霜月祭りへ行ってきた。

「下栗」という地区は、行ったことがある方はわかると思うが、本当に驚くような場所にあった。僕もなかなかの田舎を拠点にしているので、山道の運転には慣れているつもりだが、遠山郷の国道152号線から山道へ入っていき、狭いカーブが続く傾斜面をずっと上っていくときは、果たして帰ってこられるだろうかと心配になったほどだ。

それでもそこには集落があって、祭りが伝承されている(後に「下栗の里」は「にほんの里100選」にも選ばれている、素晴らしい景観であることを知った)。霜月祭りは約800年続いていると言われている祭り。昔の人はどのようにこの伝統を受け継いでいったのだろうととても興味が湧いた。

下栗の霜月祭りは、午前9時から翌午前3時までという日程で、長丁場になる。僕はせっかく来たので、一つの写真集をつくれるくらいにたくさん撮ろうと意気込んで臨んだ。

映画「千と千尋の神隠し」のモチーフの一つにもなったとして知られている霜月祭り。下栗では、2口の湯釜が設けられ、その周囲で神事や舞が行われる。初めて見たときは、その独特の世界観に驚かされた。「神楽(かぐら)」というと、漫画「鬼滅の刃」で厄払いの舞として登場していたが、霜月祭りでは「湯立て神楽」と呼ばれる神事が行われる。全国の神々を招いてお湯でおもてなしをするという、古くから続く伝統を目の前にして、とても貴重で素晴らしいものを見たという気持ちになった。

夜10時半頃、赤い襷と白い襷を締めた「襷の舞」が始まると、祭りのクライマックスに向けて多くの見物客が集まるようになった。眠気や疲れも吹き飛ぶくらい勇ましい舞で、僕は一つ一つのシーンになんとか喰らいつくように撮り続けた。

夜11時過ぎ、いよいよ神面が登場。朝からこのときを待ち侘びていたので、とてもテンションが上がった。

最後になんとか「湯切り」のシーンも写真におさめることができた。体力的にもなかなか厳しいところだったが、無事撮影を終えてホッとしたのだった。

反省点も多い撮影になったが、また次に生かせることも多いと思っているので、来年に繋げたいと思う。

祭りの雰囲気はもちろん、やはり遠山郷のロケーションにも圧倒された一日だった。鎌倉時代から伝わるともいわれる歴史と伝統のあるお祭りを、写真という形で記録することができて、とても貴重な機会となった。来年は他の地区もまわれるように日程調整できればと思う。

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