3年ぶり。それは言葉では簡単に言い表すことができないくらいに重く、長い期間のように感じた。特に若い世代の方々は、進学や就職などで能登を離れてしまったり、生活環境が変わった方も多いことだろう。過疎で祭りの担い手不足に悩まれている地域もある中で、いかに人を集めるかということは今後これまで以上に課題となるかもしれない。

石川県能登町宇出津(うしつ)地区で、3年ぶりに開催された「あばれ祭」は、毎年7月第1金・土曜日に行われる(※2022年は第2金・土曜日に開催された)。この時期に能登半島の各地域で開催されるキリコ祭りの中でも先陣を切って行われるため、あばれ祭の開催は「能登の夏祭りシーズン」開幕を意味する。残念ながら今年も中止となってしまった祭りもある中で、あばれ祭を撮る機会を得たことは僕にとって本当に重要だった。

Scene01 – キリコの巡行

待ちに待ったあばれ祭。「祭り半島」とも呼ばれる能登半島は、祭りが多いことでも知られているが、350年以上の歴史を持つあばれ祭はやはり特別で、この日に「照準」を合わせている写真家・カメラマンが能登には多いのではないかと思う。僕自身、3年前には週刊誌FRIDAYの「あばれ祭特集」で祭りの写真提供させていただいたこともあり、たくさんの方に知っていただくキッカケになった(「FRIDAY(フライデー)のあばれ祭特集に掲載されました」はこちら)。あばれ祭の衝撃は、日本国内のみならず海外の方も驚くような激しさがあるため、一枚でも多く次に繋がるような写真を撮れればと思っていた。

今年はたいへん有難いことに祭りの情報などは地域の方々からいただいていたので、準備万端笑 初日、2日目ともに昼過ぎから現地に入り、キリコの巡行を追った。

3年ぶりということで懸念していたのは体力的な問題だった。結果的に1日で経口補水液やスポーツドリンクなど計5本飲んでいたけど、2日間ともなんとか熱中症にならず撮り終えることができて良かった。

Scene02 – 大松明とキリコの乱舞

初日のハイライトはなんといっても大松明とキリコの乱舞。花火大会の後、いやさか広場に約40基のキリコが続々と集結。火花飛び散る大松明の周りを乱舞するシーンは大迫力で圧巻だ。

目で見た迫力をそのまま写真で伝えたいという気持ちはあるが、このシーンはどうにも撮るのが難しい笑 明暗差であったり、大松明やキリコ部分が思いっきり白トビしたり、ピントが合わなかったり・・撮っている枚数から考えるとイキな写真が実は毎度少ない(つらい)。今年はそれらを解消するために、例年以上に動いて色々なシーンに出会えるように心がけたり、松明部分をガッツリ入れずに迫力のあるシーンを撮ろうと試みたが、実際のところ期待以上にアウトプットできるような写真は撮れなかったのが正直のところだ。

なにせこのシーンを撮ることができるのは一年に一度だけなので、すぐにより良い写真が撮れるようになるわけではないが、今回撮影した写真を振り返りながら来年以降に生かしていければと思う。

Scene03 – あばれ神輿

あばれ祭では、白山神輿(白山神社)と酒垂神輿(酒垂神社)の2基の神輿が巡行する。初日はキリコの巡行や乱舞が見所だが、2日目の夜からは神輿が祭りの主役となる。キリコに先導された神輿は、若衆によって地面に叩きつけられたり、川に投げ入れられる。あばれ神輿と呼ばれる所以は、写真を見ていただくとわかると思う。

そして祭りの最大のハイライトで「最も熱い」のが、松明の火花を浴びながら川で神輿を破壊しようとするシーンだろう。まさに命懸けともいえ、若衆達は正直火傷必至の危険な状態だ。それでも疫病退散を祈願すべく遂行する様は、本当に勇壮で男らしさを感じる。初めて「あばれ神輿」を見られた方は、きっと「物凄いものを見た」と驚愕することだろう。

Scene04 – あばれ神輿の宮入り

祭りのクライマックスは、神輿が八坂神社へ入り宮。若衆が火の中に神輿を投げ入れ、そして叩きつける。「水」がない分、これまた火傷必至で見ているだけでも熱いのだが、燃え上がる火に立ち向かう若衆は本当に勇ましい。

2日間にかけて昼過ぎから深夜までずっと撮影していたので、体力的にはけっこう限界に近づいていたが笑、あばれ神輿を見ていると目が覚めるような衝撃で、残っていて本当に良かった。

祭りの開催にあたって、地域の方々は準備や対策など非常にたいへんだったと思うが、こうして開催していただけたことに本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

あばれ祭のYouTube

この3年、何も積み上げのなかった期間にだけはしたくなかった。スナップは撮り続けてきたし、動画(YouTube)を始めることもできた。ジンバルやドローンを使おうと思ったのは、この期間があったからこそのチャレンジだった。次に繋がることをずっと考えていたので、今回あばれ祭の動画を通しで撮影できたことは本当に良い経験となった。

YouTubeアップは少し出遅れてしまったが(みんな早い笑)、ぜひ見てみてほしい。

いつも思うのだが、祭りをゼロから作り上げようとすると、物凄い労力が必要だ。祭りの歴史と伝統があるからこそ、地域の人々に代々受け継がれ、今もなお続けられているのだと思う。地域の総力によって一つの祭りが完成しているような、壮大なエンターテイメントを見ていた気分になった。

祭りというのは「地域」や「人」を感じられるイベントであり、改めて重要なものだと感じることができた。祭りで一年が終わって、祭りから一年が始まる。来年のあばれ祭へのカウントダウンはもう始まっている。

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