はじめて見た能登の祭りがあまりにも衝撃的だった。
僕は祭りを追いかけるために勤めていた会社をやめて、石川県・能登へ移住した。はじめて見た能登のお祭りは『あばれ祭』。「お祭り半島」とも呼ばれている能登にあって、夏祭りの先陣をきって行われるキリコ祭りだ。
「キリコ祭り」はあまり聞きなれないかもしれないが、日本遺産に認定されている。巨大な燈籠(キリコ)を担ぎ出し、威勢の良い掛け声や太鼓・鉦の音に合わせ、町内を練り歩く。大松明の周囲を激しく乱舞する光景は、まさに衝撃的。あまりの迫力に、はじめて見た人はきっと圧倒されるだろう。かくいう僕も圧倒された一人で「石川県にこんな祭りがあるんだ」と、とても驚いた。
僕の心は大きく動き、祭りを撮り続けようと思って現在に至る。
能登を中心に、年間80~100の祭礼・神事を撮っているが、僕が何を見てきて、何を感じているのか、言語化していきたいと思ったので発信をはじめた。
「祭り」は英語で “Festival” と訳される。フェスティバルというと、華やかで賑わいのある祭りを連想させるが、”Ritual” と訳すような神様を祀る儀式的な祭りも能登では数多く行われている。どちらも「これぞ日本の伝統」と言いたくなるような歴史のあるもので、時代を越えて受け継がれていくべき大切な文化だ。
ただ、ご存知のように地方は過疎化が進んでいる。能登の過疎化も著しく、10年後、20年後には消滅する可能性のある集落も少なくない。「人が少ない=担い手不足」となる。小さな集落では県内の学生を呼んできたり、観光客に参加させてみたり、様々な工夫によって存続している祭りがあるが、年々規模は縮小しているのが現状だ。
僕はフォトグラファーとして、何を伝えられるだろうか。
能登は夏になるとキリコ祭りが半島各地で行われ、その数は大小100以上とも言われている。一度地元を離れて遠方で生活していても、祭りになると無理矢理休みをとって能登に帰ってくるほど、能登人は祭りを愛している。「キリコ祭り」はいつだって能登人の心にあるのだ。
祭りを撮り始めて6年経ったが、能登で祭りの写真を撮っているのは、高齢の方が多いことを考えると、20代半ばからこれだけ祭りを撮り続けてきたフォトグラファーは全国的にも少ないと思う。
僕はフォトグラファーの視点で祭りと向き合い、その魅力であったり、祭りの写真の価値・表現方法などを書いていきたいと思っている。このJournalを見て祭りへ行ってみたい、祭りの写真を撮ってみたいと思う人が一人でもいると嬉しい。
僕の心が動いたように、人の心を動かすような写真を撮っていきたい。